top of page

看取り ~残された最期の時に出来ること~

  • muratsubaki1002
  • 2023年4月13日
  • 読了時間: 5分

更新日:2023年5月1日

当院の訪問マッサージでは『看取り』を前提としたご依頼を受けることがあります。

先日も5年前からお身体のケアをさせていただいていた方のご家族より、あらためてこんなご依頼をいただきました。


【ご家族に掲載の承諾をいただいたメール】

 ↓  ↓  ↓




患者様ご本人の意思確認が難しい状態のなかで、献身的に長年お母様(患者様)の介護をされてきたご家族の苦しい想いが伝わるご依頼でした。ご自宅にいらっしゃる頃からお付き合いが始まり、高齢者施設に入所されてからも多くの時間を共有させていただいており、コロナ禍の苦しい時期も共にしてきましたので、私としても出来る限りのお役に立ちたいという想いで引き受けさせていただきました。


在宅医療や介護に携わる仕事をしていなければ、人の最期に立ち会う機会は非常に限られます。ほとんどの人にとって両親などの身内のその時が初めての経験になります。それゆえ人生の最期の時間に親や身内に何が出来るのかを想像することはとても難しいことだと思います。

それでも、人は老いとともに日に日に出来ることが少なくなり、終末期には寝たきりとなるということは漠然と想像できるのではないでしょうか。ただそれがどんな苦労や苦痛を伴うことなのかを想像することは難しいということだと思います。


現実は、自ら寝返りをうつことも難しい状態になり、常に同じ体勢でいることで生じる様々な問題に直面します。褥瘡(床ずれ)などの皮膚のトラブルは聞いたことがあるかもしれませんが、動かないことで筋肉が萎縮して硬くなることで呼吸(発語や喀痰など含む)や嚥下(飲み込み)といった生命活動にも困難や苦しさが伴うようになる方もいらっしゃいます。動けなくなることによって生じる様々な問題に直面すると、私たちが日々当たり前のように行えている生命の営み(呼吸、循環、排泄など)が『自ら動ける』ことを前提にして成り立っていることを痛感します。


そのような状況のなか、見た目にも痩せてしまった状態の方にマッサージ師に何が出来るのかと思うかもしれませんが、そんな状態でもお役に立てることはあります。むしろ経験を積んだ施術者にしか出来ないことがあります。触れたり揉んだりさすることで循環を改善し心地よさを感じてもらうことは当然として、呼吸や嚥下を少しでも楽に行えるようにすることがとても重要になるのです。呼吸や嚥下に必要な動き(首や顎の動きなど)がしやすくなるようにソフトな骨格操作を施したり、それを妨げる筋肉(頭頚部や胸郭部のみならず上肢帯や股関節など)の硬さを緩和することで苦しさを和らげていきます。無理な延命ではなく、その時ご本人が行えていることを少しでも楽に行えるように改善して助けること。少しでも心身穏やかに最期の時を迎えていただけるようにと。

そして、言うまでもなく優しく肌に触れるという行為自体には安らぎや心地よさを与える効果があります。施設に入っていたり、寝たきりの方などにとっては私たちが想像している以上に大切な事なのだと感じています。


今回のケースでは病院側からは数日~1週間持てばという状態での看取りでした。退院されてきてあらためてお身体などを診させていただき、いつ何が起きてもおかしくない状態であることは理解できました。それからの施術では、その方がその時に持っている(残された)身体機能や『その方らしさ』を少しでも維持改善すべく心身ともに適切な刺激を入れていく日々。ご家族、医療介護スタッフの献身とともに、長期の入院で失われていた笑顔やそれ以前は行えていた動き(じゃんけんやバイバイ動作)も取り戻し、生きようとする力をしっかりと感じることが出来る状態で1週間を越えることが出来ました。


※寝た状態で施術を受けていただいた後、寝た状態から解放すること(重力の影響で寝た姿勢は必ずしも楽ではないため)で心身のストレス緩和を行うために座らせることもあります。呼吸や表情などを診ながら心身のリフレッシュが出来ることが大前提です。


【ご家族に掲載の承諾をいただいたメール】

↓  ↓  ↓


それでもすべての命は限りあるもの。退院から2週間が経った日に最期の時は訪れました。ご家族からは「その前の日も別れ際に手をふってくれていたので大丈夫かなと思いましたが…」と。

※最初で最後の2ショット


※呼吸や嚥下などに関連する胸郭を上肢帯との連動のなかで緩めているところ


この写真と動画はお亡くなりになる前日に撮影したものです。その前の日にご家族から、記録用として「村椿先生と母の2ショット写真と施術の様子がわかる動画を撮ってくれませんか」と連絡があり、初めて2人一緒に写真と映像に収まりました。

コロナ禍の影響でご家族が施設に入ることが出来なかったので、報告のために患者様の映像は逐一撮影していたのですが、2人一緒に映ったのは初めてのこと。まさかその翌日にお亡くなりになるとは思いもせず。とても思い入れのある忘れられない大切な一枚となりました。


そして患者様がご逝去されてしばらく経った先日もご家族とメールのやり取りをしているなかでこんな想いを伝えていただけました。

「施設入所してからは、毎日施設に行けるわけでもなく、私が触ってあげることができず、コロナによる面会禁止中も含め、本当に週3回、母に優しくふれていただけることが、どれだけ、わたしの心の支えと安心になったことか」と。

少しでもお役に立てたのかと思うと治療家冥利に尽きる思いです。



Comments


東京都北区赤羽を拠点とした​訪問マッサージと整体治療
130209_名刺.jpg
〒115-0056 東京都北区西が丘1-39-14
​TEL 03-5948-5295

COPYRIGHT (C) 2022 つばき治療院. ALL RIGHTS RESERVED.

bottom of page