腰部脊柱管狭窄症 手術はできればしたくない! そんな方に
- muratsubaki1002
- 2022年6月18日
- 読了時間: 6分
整形外科疾患(腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニア、変形性股関節症、変形性膝関節症など)で主治医から手術を勧められているが、できれば手術はしたくない。そういったお悩みを抱えている方は少なくないのではないでしょうか?
当院にご来院される段階では多くの場合、悩み深く相当に追い込まれていたりします。そのため、①まずはお身体の状態(姿勢バランスや動作)を診させていただきつつ、②症状(痛みなど)の特徴、詳細を整理しクリアにしていきます。
このプロセス、特に②はとても大事です。手術回避の糸口を見つけるためにも、不安を解消し希望を見出すためにも、かりに手術が避けられないとしても術後をより良い状態に導くためにも肝となる部分です。
しかし病院ではこのプロセスが大きく欠落している印象があります。現代医療(医療保険制度など)の特性上、一人の患者に十分な時間を割くことが難しいのでしょうが、患者にとって医師の言葉や診断の持つ意味は極めて重く、主治医の先生、もう少し懇切丁寧に診てあげてくださいよ~と思うことは少なくありません。笑
とは言え、だからこそ我々のような代替医療の担い手の存在意義があると思っていますし、施術でお身体を良い状態に導くだけでなく、主治医の先生と良い関係(主従関係ではなくパートナ関係)を築いていくためのサポートも大切な役割だと思っています。
では一つ事例をあげてみます。腰部脊柱管狭窄症の方のケースです。
病名でひとくくりにされますが、おひとりおひとり身体の状態は異なりますし、当然のように根本的な原因も十人十色です。このケースでは腰部が過伸展して脊柱管が狭窄しているその原因が腰より上位の姿勢にありました。「身体の上位のパーツが重しや蓋のようになって脊柱を潰すような形になり、腰部あたりの脊柱管が大きなあおりを受けている」という感じでしょうか。あくまでもこの方の場合ですので詳細な姿勢分析は割愛しますが、来院時の訴えは「腰の痛み、脚の痛みと痺れ、その影響で歩けなくなったことがあり、状況によっては手術だと言われている」ということでした。
ですが私の第一印象としては「手術必要?」というものでした。シビアな神経症状(失禁などの排尿障害)がまだ見られないこと、症状の出る箇所やシチュエーションやタイミングに腰部脊柱管狭窄症とは思えない所見がいくつかあったことがその理由です。
何回かご来院いただいている過程でも症状の変化は見られましたが過度に悪化する兆しは見られませんでした。そしてある日の施術で別の訴えが浮上しました。肩や腕に痛みを訴えたのです。その時、ハッと気づきました。腰部脊柱管狭窄症の根本的な原因は円背(猫背)だと。
整形外科疾患の場合、レントゲンやMRIが確定診断の大きなウエイトを占めますが、検査では患部(局所)の状態(姿勢※主に骨格配列)だけが切り取られます。もちろんそれも大事なポイントですが、人体は全身が一つのユニットとしてバランスを取っていますので、患部(局所)だけではなく全身を見なければ患部がそうなった原因を見つけることは難しいです。
またもう一点、レントゲンやMRIの限界として、ほとんどの場合で症状の出ていない体勢/姿勢で撮影をするという点でがあります。特に腰部脊柱管狭窄症の場合、特徴的な症状としてあげられる間欠性跛行(しばらくの間立っていたり歩いていたりすると、脚が痛くなったり痺れたりする。立ち止まるなどして姿勢を変えることで症状が消えて歩けるようになる)から考えても症状の出ていない体勢で撮影された画像だけで判断することには疑問があります。
そのため当然ですがその方の立ち姿勢や歩き方を診て、そしてお身体を触れて、さらには施術により変化を与えてそれに対する反応を見ることで、どのような姿勢や歩行の傾向(崩れ方/歪み方)があるのかを知ることは極めて重要で、この部分が詳細にわかってくると本当に手術が必要なのか否かなどが判断できると思いますし、状況を大きく改善することも可能になってきます。
またよく「手術をしたのに症状が消えない」という訴えがありますが、これはおそらく手術が失敗したのではなく、そもそも手術が必要なかった可能性が高いです。「???」と思われるかもしれませんが、手術は脊柱管を構成する骨に固定などの何らかの処置を施すわけですが、もしも痛みや痺れなどの症状が脊柱管の変形の影響ではなく、単に筋肉の働き方/使い方によって生じていたとすればどうでしょう。手術で骨にアプローチしても術後に動き方などの筋肉の使い方が変わらなければ同様に症状は出てきます。このような無駄に手術をしてしまったという方は実はそれなりにいるという実感です。
ですので、手術の前に本当にその症状が脊柱管の変形による神経症状なのか?それとも単純に習慣的な姿勢の取り方や動き方による筋肉自体が発するものなのかを見極める必要があると思います。患者にしても手術後に症状が変わらなかったり、医師としても手術が失敗したなどと言われてしまうのはお互いにとって何の得もありませんから。
そういった観点からも手術前にもう一度しっかりと症状が出る姿勢や歩き方に起因しそうな筋肉の問題にアプローチしてほしいと思います。マッサージやストレッチや運動など種類は何でも構わないと思います。全体の姿勢のバランスを見直し、局所の筋肉の働きを変えることに取り組まれてみてはいかがでしょう。
もちろんそれでも症状が思うようなレベルにまでコントロールできないこともありえます。施術者側の技量の限界であったり、姿勢や動きの習慣が極めて強かったりする場合などです。こういった状況を避けるために、我々サイド(代替医療従事者)としては早い段階で予防的な手段としてマッサージやストレッチや運動などを生活に取り入れてほしいと考えています。
現代医療の進歩は素晴らしく、どうしようもない状況に追い込まれた私たちを救ってくれることも事実ですが、基本的に西洋医学/現代医療における薬も手術も対症療法であって根本的な問題にはアプローチしていません。そして副反応や後遺症が生じることも当たり前のこととして受け止める必要があります。
そういうものだという認識をもって、日頃から自分自身の健康のために運動や食生活などに気を配りながら、我々のような姿勢や動きの専門家のサポートを受けて未病を治し、気になるシグナル(痛みや不調)が出た際に病院にかかり、どうしようもなくなったら手術に踏み切る。この流れがある方は、かりに手術を受けるような事態に陥っても十中八九予後良好です。
ちなみに、今回事例で挙げさせていただいた方も現在は症状も緩和し、自分の身体の問題点を認識したうえで姿勢を崩す原因となっている筋肉をセルフケアしたり、体幹をコントロールするためのエクササイズを少しずつ取り組まれるようになっています。
今回の投稿/事例には様々な大事なポイントが多数含まれていると思います。皆さんはどこに興味を持たれましたか?今後、一つ一つのポイントを掘り下げるつもりですので引き続きご愛読ください。
Comments